若手の離職が止まらないと、採用担当者や直属の上司の対応だけに原因を求めたり、「最近の若者」という大きな主語で片付けたりしがちです。しかし、離職率は企業規模などでも異なり、退職理由も一つではありません。まず比較できる基準を持ち、自社で何が起きているかを分けて見る必要があります。
若手の離職が止まらない会社は、退職者を引き止める施策を増やす前に、自社の離職率と退職時期を確認し、仕事の設計、採用時との期待値、会社の発信を見直すことが重要です。施策の数ではなく、離職が起きる場所を特定して改善します。
- 新卒者の3年以内離職率の基準
- 企業規模別の離職率の違い
- 若手離職の原因を見極める順番
- 仕事、期待値、発信の見直し方
- 離職対策で避けたい対応
離職率が高いだけで会社の良し悪しは決まりません。業種、職種、採用人数、企業規模で前提が違います。本記事では、信頼できる機関の調査を基準線として使い、個人を責めない改善方法を考えます。
若手離職は公的統計と比べる

厚生労働省が公表した令和4年3月卒業者の状況では、就職後3年以内の離職率は新規大卒就職者33.8%、新規高卒就職者37.9%です。若手の離職は一部の会社だけに起きる現象ではありません。
令和4年3月卒業の新規大卒就職者の就職後3年以内離職率は33.8%、新規高卒就職者は37.9%だった。
大卒者の事業所規模別では、5人未満57.5%、5〜29人52.0%、30〜99人41.9%、100〜499人33.9%、500〜999人31.5%、1,000人以上27.0%です。規模が小さいほど高い傾向があるため、全体平均だけで自社を評価すると状況を見誤ります。
自社では、入社人数と退職人数だけでなく、入社後いつ辞めたか、どの職種や配属で続いたかを確認します。採用人数が少ない会社は、一人の退職で率が大きく動くため、率と人数を併記してください。
若手離職の原因を三段階で見る
退職理由のアンケートだけでは、組織の原因まで分からないことがあります。「一身上の都合」「キャリアのため」という回答の背後に、採用時の説明、配属後の仕事、評価、上司との関係が重なっている可能性があるためです。
入社直後の離職を確認する
入社直後に離職が集中する場合は、求人や面接で伝えた内容と、実際の仕事や働き方に差がなかったかを確認します。良い面だけを伝えていないか、配属先が採用時の説明を理解しているか、初日に必要な情報と道具がそろっているかを見ます。
仕事を任せた後を確認する
仕事を覚え始めた時期の離職は、任せる範囲と支援の不一致を確認します。任せる仕事が増えても判断基準が示されない、失敗を避けるために仕事を渡さない、相談先が毎回変わるといった状態は、成長の実感と安心の両方を損ないます。
将来を考える時期を確認する
一定期間後の離職では、次に担う役割、身につく能力、評価の基準が見えているかを確認します。昇進だけを成長の道筋にせず、専門性、顧客対応、後輩支援など複数の役割を言語化します。
時期を分けると、すべての退職に同じ施策を当てる誤りを避けられます。入社直後の期待値のずれに研修を増やしても、原因が採用時の説明なら改善範囲がずれます。
大手でも若手離職は起きている
リクルートワークス研究所の古屋星斗氏は、大学卒者の3年以内離職率について、大手企業でも変化が起きていると論じています。
個社単位、特に大手企業では、大学卒の3年以内離職率が2021年卒に過去最高値の28.2%となっている。
この28.2%は2021年卒の大手企業に関する値です。厚生労働省の令和4年卒全体33.8%とは対象卒年と集計範囲が違うため、同じ系列の数字として比較しません。待遇や知名度がある会社でも離職が起きることから、給与や労働時間だけでなく、仕事を通じた成長や役割の見通しも確認する必要があります。
海外調査で見る仕事への熱意
Gallupの国際調査「State of the Global Workplace」の日本カントリーデータ最新版では、Gallupの定義で仕事に熱意を持って関与している「engaged」の従業員割合を比較しています。
日本の従業員エンゲージメントは8%で、東アジア平均18%、世界平均20%を下回る。生活全体の評価が良好な「Thriving」は31%だった。
国際調査の平均を一社の離職原因へ直接当てはめることはできません。また、エンゲージメントが低い人が必ず離職するわけでもありません。それでも、離職を本人の我慢不足として扱わず、仕事への熱意を生みやすい役割、対話、成長の設計を経営課題として考える視点を与えます。
若手離職で見直す三つの設計

仕事の設計を見直す
職務名だけでなく、任せる範囲、判断してよいこと、確認が必要なことを明確にします。小さな仕事だけを長く続けさせる状態も、準備なく大きな責任を渡す状態も避けます。本人の習熟に合わせて役割を広げ、振り返りで次に身につける能力を確認します。
期待値のすり合わせを見直す
採用時に伝えた仕事、働き方、評価と、配属後の実態を照合します。現場が忙しい時期や仕事の厳しさも隠さず、会社から期待することと、本人が仕事に期待することを一方向ではなく話し合います。
会社の発信を見直す
採用サイトや求人で掲げる理念が、現場の判断や評価にどう表れているかを示します。社外向けのきれいな言葉と、社内の実態が離れていれば、入社後の不信につながります。発信を変えるだけでなく、現場の課題を経営側へ戻し、実態を直してから伝えます。
若手離職を記録して改善する
離職率は年に一度だけ見るのではなく、入社期、職種、配属、退職時期を同じ定義で記録します。個人を特定する情報の扱いに注意し、少人数の部署では集計結果から本人が推測されないようにします。
- 対象期間の入社人数と退職人数
- 入社から退職までの期間
- 職種、配属、上司の変更
- 求人や面接で伝えた内容との差
- 本人が挙げた理由と組織側の要因
一件の退職理由を全員へ一般化しないことも重要です。同じ時期や配属で傾向が重なったときに、仕事、期待値、評価、支援のどこに共通点があるかを確認します。改善後も同じ定義で推移を見ます。
若手離職対策で避けたい対応
制度を導入すること自体を目的にすると、運用が現場の負担になり、原因が残ります。1on1、メンター、研修には役割がありますが、実施回数だけで効果を判断しません。
- 退職を若手本人の価値観だけの問題にする
- 退職理由を聞かず一律の施策を導入する
- 面談を増やすが相談内容を改善へつなげない
- 辞めそうな人だけ急に待遇を変える
- 離職率だけで管理者や部署を評価する
離職を完全になくすことは現実的ではありません。本人の希望と会社の役割が変わり、双方にとって転職が合理的な場合もあります。目指すのは退職を封じることではなく、説明不足や仕事の設計不良による避けられた離職を減らすことです。
若手離職のよくある質問
Q.離職率は何%なら問題ですか
A.一律の基準はありません。厚生労働省の同じ卒年、同じ企業規模に近い値を参考にし、業種、職種、採用人数も踏まえます。少人数では率が大きく動くため人数も見ます。
Q.退職面談の本音を信じてよいですか
A.回答は重要ですが、それだけで原因を決めません。退職時期、配属、業務変更、求人時の説明など事実と照合し、複数の退職で共通する組織要因を探します。
Q.給与を上げれば離職は止まりますか
A.給与は重要ですが、単独で離職が止まるとは断定できません。仕事の負担、評価、成長、上司との関係、採用時とのずれを分け、改善すべき条件を確認します。
まとめ:若手離職を構造から見直す
若手の離職が止まらないときは、世代への評価や単発の引き止め策から始めず、公的統計と自社記録で状態を確認します。そのうえで、離職時期に応じて仕事、期待値、発信のどこにずれがあるかを見ます。
- 企業規模に近い公的統計と比較する
- 率だけでなく人数と退職時期を見る
- 仕事の範囲と成長の道筋を示す
- 採用時の説明と配属後の実態をそろえる
- 制度の実施回数ではなく原因の改善を測る
まずは過去の退職を入社直後、仕事を任せた後、将来を考える時期に分けてください。退職が重なる場所を見つけることが、若手が続けられる職場へ変える最初の一歩です。

